2026年9月24日
Overview:
① 少量のワインを飲む人では、死亡率が低い「関連」がみられました。
② ただし、ワインが寿命を延ばすと証明した研究ではありません。
③ 飲酒量が増えるほど、アルコール関連死やがんなどのリスクは高まりました。
健康のために飲酒を始める必要はありません。

どのような研究1)?
- 対象:ノルウェーの男女187,294人(心血管病、糖尿病、がんの既往がない人)
- 追跡期間:平均21.1年
- 死亡者数:15,642人
- 調査方法:研究開始時に、直近14日間のビール・ワイン・蒸留酒の「グラス数」を自己申告
- 解析:年齢、喫煙、血圧、コレステロール、BMI、教育歴、運動、婚姻状況などを統計的に調整

主な結果
- 0杯:飲まない人を基準(1.00)とし、全死亡、虚血性心疾患死、アルコール関連死はいずれも1.00でした。
- 1~9杯:全死亡は0.91、虚血性心疾患死は0.86と基準より低い一方、アルコール関連死は1.63でした。
- 10~19杯:全死亡は1.01、虚血性心疾患死は0.82、アルコール関連死は4.47でした。
- 20杯以上:全死亡は1.44、虚血性心疾患死は1.09、アルコール関連死は13.0でした。
読み方:1.00より低い数値は、飲まない人より死亡率が低かったことを示します。ただし「原因と結果」ではなく、あくまで集団でみられた関連です。少量群でもアルコール関連死は増えており、20杯以上では全死亡とがん死亡も上昇しました。

- 〈ワインを含む組み合わせ〉
ワインを少量含むグループでは、ビールや蒸留酒を一緒に飲むかどうかに関わらず、全死亡のハザード比は0.84~0.90でした。一方、ワインを含まない組み合わせは1.00~1.06で、死亡率低下は明確ではありませんでした。
「ワインが体によい」とは言い切れない理由
- 観察研究:飲酒を割り付けた試験ではないため、因果関係は証明できません。
- 飲酒量は開始時の1回だけの確認:21年間に飲み方が変化しても、十分に反映されません。
- グラスの大きさが不明:純アルコール量に換算できず、日本の「1杯」と単純に比較できません。
- 元飲酒者を区別できない:体調不良で飲酒をやめた人が非飲酒群に含まれ、少量飲酒が実際よりよく見えた可能性があります。
- 食事など未測定の要因:ワインそのものではなく、食生活や社会経済的背景が結果に関係した可能性があります。
患者さんへのメッセージ

- 飲まない人:健康効果を期待して飲み始める必要はありません。
- 飲む人:「少なければ安全」ではありません。量と頻度をできるだけ減らし、休肝日を設けましょう。
- 薬を服用中、妊娠中・妊娠希望、肝疾患、依存症の既往がある人:飲酒を避けるべき場合があります。主治医に相談してください。
- 顔が赤くなりやすい人:アルコール分解能力が低い可能性があり、少量でも影響が出やすい可能性があるため注意が必要です。
- 喫煙する人:本研究では、飲酒量が増えたときの死亡率上昇が非喫煙者より目立ちました。禁煙と節酒を一緒に考えましょう。
- 〈飲酒量は「純アルコール量」で把握〉
純アルコール量(g)=飲んだ量(mL)×アルコール度数×0.8
例:ビール500mL・5%なら、500×0.05×0.8=20gです。商品表示や専用アプリも活用し、「今より少なく」を目標にしましょう。
まとめ
この大規模研究では、少量のワインを飲む人で全死亡が低い関連がみられました。しかし、観察研究には交絡や「シック・クイッター効果」などの限界があります。がんリスクについては安全な飲酒量を示せず、アルコール関連死は少量から増加していました。大切なのは、ワインを健康食品のように考えず、飲むなら量を減らし、個々の病気や薬との関係を医療者に相談することです。
- Tverdal A, Selmer R, Thelle DS. Scandinavian Journal of Public Health, 2026.
※本コラムは患者さん向けに要約・再構成したもので、個別の診断や治療に代わるものではありません。
この記事を監修した医師

たむら内科・消化器内視鏡クリニック院長
田村 耕一
和歌山県立医科大学医学部卒業。同大学附属病院をはじめ、関連基幹病院にて勤務し、消化器外科手術や消化器内視鏡検査、抗がん剤治療などに精通している。また、筆頭著者として多数の英語論文の執筆歴があり、消化器がんの早期診断と治療を含めた啓発活動にも重要性を見出だしている。2024年11月より大阪府池田市でたむら内科・消化器内視鏡クリニック院長として北摂を中心とした地域医療と内視鏡検査の普及にも注力している。
