2026年10月28日
再発リスクに合わせて、受診回数と検査の間隔を決める

乳がんの手術や放射線治療、薬の治療が終わったあとも、定期的な受診は続きます。目的は、再発のサインを確かめることと、治療後の体と生活を支えることです。2026年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)ガイドライン1)は、全員に同じ検査をするのではなく、一人ひとりに合った受診の回数や検査を選ぶ考え方を示しました。
定期受診は、再発を確認するだけではありません。薬の副作用、腕のむくみ、手足のしびれ、関節の痛み、不眠、不安、仕事や家事の困りごとも相談できます。体と生活の両方を確認することが大切です。

このガイドラインは誰を対象にしている?
対象は、乳がんを治すことを目指した初期治療を終え、今は再発や転移が見つかっていない方です。再発を防ぐためのホルモン療法を続けている方も含まれます。すでに再発や転移がある方の検査や治療は、ここで説明する内容とは別となります。
受診回数やマンモグラフィの間隔については、まだ十分な研究が行われた結果というわけではありません。そのため、このガイドラインの回数は絶対の決まりではありません。病気の特徴、治療内容、本人の希望、通院の負担に合わせて決めます。
まず押さえたい5つのポイント
- 基本は診察とマンモグラフィ:必要に応じてオンライン診療も使えます。
- 受診回数は再発リスクに合わせます:治療後の時間がたてば、回数を減らせることもあります。
- 症状がなければ、CTやPETを定期的に受ける必要はありません
- 腫瘍マーカーを再発確認のために毎回測ることは勧められていません
- ctDNAは期待される検査ですが、今は通常の定期検査には使用されていません
リスク別フォローアップの目安
低強度
治療後の経過が安定し、現在の再発リスクが比較的低い方。
診察の目安:原則として年1回。かかりつけ医やオンライン診療も選択肢です。
マンモグラフィ:乳房温存術後は最初の3年間は年1回。その後、条件を満たす50歳以上では1~2年ごとを検討します。
中強度
内分泌療法中、または治療後しばらく注意深い確認が必要な方。
診察の目安:6~12か月ごと。診断後5~10年を目安に続け、その後は間隔を広げることを検討します。
マンモグラフィ:乳房温存術後は年1回。片側切除後は反対側を年1回撮影します。
高強度
再発リスクが高め、治療継続中、または遺伝性リスクなどがある方。
診察の目安:3~6か月ごと。状態が安定すれば、将来は間隔を広げることを検討します。
マンモグラフィ:乳房温存術後、または片側切除後の反対側は年1回撮影します。
「低・中・高」は、がんの重症度を固定する指標ではない
「低・中・高」は、がんの重さを決める言葉ではありません。今、どのくらいの間隔で診察を受けるとよいかを考えるための目安です。病期、がんのタイプ、薬が効いたか、治療を続けているか、遺伝的なリスク、診断からの年数などで変わります。
治療の直後は、短い間隔で診察を受けることがあります。その後、再発なく時間がたてば、受診の間隔を広げられることがあります。新しい症状が出たときは、次の予約を待たずに相談します。受診計画は、今の状態に合わせて変えてよいものです。
マンモグラフィは「毎年」が唯一の答えではない
50歳以上で、乳房温存手術から3年間再発がなく、がんが小さい、悪性度が低い、リンパ節転移がない、ER陽性などの条件を満たす方では、マンモグラフィを1~2年ごとにする選択があります。毎年受けたい方は、利点と負担を医療者と話し合って決めます。
Mammo-50試験には、診断から3年間再発がなかった50歳以上の5,235人が参加しました。毎年マンモグラフィを受ける方法と、より長い間隔で受ける方法を比べました。約5.7年の観察では、再発のない期間、生存、乳がんによる死亡に大きな差はありませんでした。ただし、参加者の多くは再発リスクが低い方でした。若い方や再発リスクが高い方に、そのまま結果を当てはめることはできません。
乳房を残す手術を受けた方は、残った乳房をマンモグラフィで確認します。片方の乳房を切除した方は、反対側の乳房を撮影します。両方の乳房を切除した方は、症状がなければ通常はマンモグラフィを行いません。胸やわきの下にしこり、皮膚の変化、痛みなどがあれば、診察を受けます。
MRIなどの追加画像検査はどのような場合に?
乳房MRIは、全員が受ける検査ではありません。遺伝的なリスクがある方、若いころに胸へ放射線治療を受けた方、50歳未満で乳がんになった方、乳房の密度が高い方などで検討します。MRIが受けられない場合は、造影マンモグラフィや超音波を考えることがあります。
MRIは小さな変化を見つけやすい検査です。その一方で、がんではない変化も見つけやすく、再検査や生検が増えることがあります。造影剤、検査時間、狭い場所への不安、費用も考える必要があります。「よく見つかる検査だから受ける」のではなく、自分に必要かを医療者と相談します。
通常のデジタルマンモグラフィと、乳房を立体的に撮るトモシンセシスは、どちらも使えます。どちらを使うかは、施設の設備や、前の画像と比べやすいかなども含めて決めます。
まとめ
治療後の基本は、定期的な診察と、必要な乳房へのマンモグラフィです。受診や撮影の回数は、治療内容、再発リスク、診断からの年数に合わせて変えられます。「毎年でなければ危険」「多いほど安心」と決めつけず、本人の希望も含めて医療者と相談します。
- J Clin Oncol 2026 Jul 16:101200JCO2601700. doi: 10.1200/JCO-26-01700. Online ahead of print
この記事を監修した医師

たむら内科・消化器内視鏡クリニック院長
田村 耕一
和歌山県立医科大学医学部卒業。同大学附属病院をはじめ、関連基幹病院にて勤務し、消化器外科手術や消化器内視鏡検査、抗がん剤治療などに精通している。また、筆頭著者として多数の英語論文の執筆歴があり、消化器がんの早期診断と治療を含めた啓発活動にも重要性を見出だしている。2024年11月より大阪府池田市でたむら内科・消化器内視鏡クリニック院長として北摂を中心とした地域医療と内視鏡検査の普及にも注力している。
