2026年10月07日
長く使っているPPIの中止方法を比べた研究1)から医療コラムを作成しました。

PPIとは?
PPI(プロトンポンプ阻害薬)は、胃酸の分泌を強く抑える薬です。胸やけや酸の逆流を起こす胃食道逆流症などに使われます。今回の研究では、同じしくみで胃酸を抑えるP-CABもまとめてPPIとして扱われました。
薬が働くしくみ:胃で作られた酸が食道へ逆流すると、胸やけや酸っぱいものが上がる感じが起こります。PPIは胃酸を作るしくみを抑え、こうした症状を軽くします。
どんな研究?
研究の方法:対象は、症状がないか軽く安定しており、標準量のPPIを6か月以上使用していた成人63人です。参加者は、研究開始時からPPIをすぐ中止するグループと、2週間だけ半量にしてから中止するグループに分けられました。どちらのグループも、症状が出た日には以前と同じ薬と量を必要時のレスキュー薬として使用できました。24週後と48週後に、直前28日間でレスキュー薬を使った日が8日以下であれば「中止成功」と判定されました。
研究でわかったこと
24週後の中止成功率:「すぐ中止」したグループは74.2%、「2週間だけ半量にしてから中止」したグループは75.0%でした。成功率はほぼ同じで、この研究では一方の方法が明らかに優れているとはいえませんでした。
- 2つの方法に明らかな差はありませんでした。
- 48週後も同様の傾向でした。
- 研究であらかじめ定めた有害事象は報告されませんでした。
- 中止後の早い時期にレスキュー薬を使う人がいましたが、それだけで長期的な中止失敗を意味するわけではありませんでした。
「リバウンド症状」とは?

PPIを長く使ったあとに中止すると、胃酸の分泌が一時的に増え、胸やけ、酸っぱいものが上がる感じ、みぞおちの不快感が出ることがあります。これは「元の病気が必ず悪化した」という意味ではなく、薬をやめた反動で起こることがあります。研究でも、必要時のレスキュー薬は中止後の早い時期に使われる傾向がありましたが、その後の長期的な中止成功を妨げるとは限りませんでした。
症状が出たときの考え方:中止直後の胸やけや不快感は、一時的に胃酸が増えたために起きている可能性があります。まず、症状が出た日時、食事内容、必要時薬を使った日を記録しましょう。症状が続く、薬を頻繁に必要とする、日常生活に支障があるときは、主治医へ相談してください。
中止を考える前のチェック

- 処方の目的:逆流症や潰瘍の治療、出血予防など、現在も薬を続ける理由があるかを確認します。
- 病状:重症の逆流性食道炎、食道潰瘍・狭窄、バレット食道などがないかを確認します。
- 出血リスク:過去の消化管出血や、抗血小板薬・抗凝固薬・鎮痛薬などの使用状況を確認します。
- 中止後の計画:必要時薬の種類と使える回数、再診時期、症状が悪化した場合の連絡先を主治医と決めておきます。
研究結果の読み方:24週時点の差は0.8ポイントで、95%信頼区間は−23.1~21.5ポイントでした。つまり、この小規模研究では一方が明らかに優れているとはいえません。「どちらでも必ず成功する」という意味でもないため、患者さんの病状や希望に合わせて方法を選びます。
患者さんへの実践ポイント
- 確認する:今も薬を続ける理由があるか、内視鏡の所見や併用している薬を主治医と確認します。
- 方法を選ぶ:すぐ中止するか、短期間だけ減量してから中止するかを、病状や希望に合わせて決めます。
- 症状に備える:一時的に症状が出た場合の対処法、レスキュー薬の使い方、受診の目安を事前に確認します。
症状が出たときの行動フロー

- 軽い胸やけ:症状と食事を記録し、医師から指示された薬を適宜使います。
- 繰り返す・続く:自己判断で連用を再開せず、処方した医師へ相談します。
- すぐ相談するサイン:吐血、黒い便、強い胸痛、飲み込みにくさ、繰り返す嘔吐、意図しない体重減少がある場合は、速やかに医療機関へ連絡してください。
この研究結果で注意が必要な点
- 参加者は63人で、比較的小規模な研究です。
- 症状が安定した外来患者が対象で、重い逆流性食道炎などは除外されています。
- 「中止成功」は完全に薬をゼロにすることではなく、必要時使用が28日間で8日以下という定義です。
- 高齢で、中止前の逆流症状が軽い人ほど成功しやすい傾向は探索的な結果で、確定的ではありません。
まとめ
PPIをやめられる状態かを医師が確認したうえであれば、「すぐ中止」と「2週間の半量後に中止」は、どちらも選択肢になりえます。大切なのは、中止直後に症状が出る可能性を知り、必要時の薬と受診の目安を事前に決めておくことです。
- J Gastroenterol (2026) 61:1083–1092 https://doi.org/10.1007/s00535-026-02419-z
この記事を監修した医師

たむら内科・消化器内視鏡クリニック院長
田村 耕一
和歌山県立医科大学医学部卒業。同大学附属病院をはじめ、関連基幹病院にて勤務し、消化器外科手術や消化器内視鏡検査、抗がん剤治療などに精通している。また、筆頭著者として多数の英語論文の執筆歴があり、消化器がんの早期診断と治療を含めた啓発活動にも重要性を見出だしている。2024年11月より大阪府池田市でたむら内科・消化器内視鏡クリニック院長として北摂を中心とした地域医療と内視鏡検査の普及にも注力している。
