腸と肝臓はつながっている|池田市の内科・消化器内科(内視鏡)・肛門外科|たむら内科・消化器内視鏡クリニック

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腸と肝臓はつながっている

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2026年4月12日

便からわかる脂肪肝の進行

「腸内環境を整えましょう」という言葉を、最近よく耳にするのではないでしょうか。腸の中には数百兆個もの細菌がすみついており、消化や免疫、代謝といった体内調節に関わっています。実はこの腸内細菌、肝臓の病気とも深く関係していることが、近年の研究で次々と明らかになってきました。

今回紹介する研究は?

今回紹介する研究は、「MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)」という、お酒をほとんど飲まない人にも起こる、いわゆる「脂肪肝」がテーマ1)です。MASLDは、単なる脂肪肝にとどまらず、炎症や肝臓の線維化を引き起こし、進行すると肝硬変や肝がんに至る可能性もあります。現在、病気がどこまで進んでいるかを正確に調べるには、肝臓に針を刺して組織検査を行う「肝生検」という体に負担の大きい処置が必要になります。

そこで研究者たちは、「便を調べることで、肝臓の状態がわかるのではないか」と考えました。健常者とMASLD患者あわせて50人以上を対象に、便中の腸内細菌を詳しく解析したところ、病気が進むほど腸内細菌の種類が減り、バランスが崩れていくことが分かりました。

特に注目されたのは、健康な腸に多い善玉菌の代表格が減少し、逆に炎症と関わりの深い細菌が増える傾向です。腸内環境が乱れると、腸で生じた有害物質が血流に乗って肝臓へ届き、肝臓に負担をかけると考えられています。つまり、腸の乱れが肝臓の炎症を後押しして、肝臓の脂肪化や病気の発生を進めてしまう可能性があるのです。

さらに、この研究では腸内細菌の「組み合わせ」を数式化して解析することで、健康な人の肝臓と初期の脂肪肝、初期と進行した脂肪肝をある程度見分けられる可能性も示されました。まだ研究段階ではありますが、「便を調べるだけで肝臓を含めた病気の進行具合を推測できる未来」が現実味を帯びてきています。

もちろん、この結果だけですぐに新しい診断法が使えるわけではありません。今回の研究では対象人数が少なく、年齢や体重の影響も完全には解決できていないため、さらなる様々な人種の参加も含めた大規模な研究が必要です。それでも、体に負担の少ない方法で病気を早く見けられる可能性は、多くの人にとって朗報と言えるでしょう。

腸と肝臓は「腸–肝軸」と呼ばれる密接な関係にあります。日々の食生活や生活習慣が腸内環境を通じて肝臓の健康にも影響すると考えると、発酵食品や食物繊維を意識した食事、過度なカロリー摂取を控えることの大切さが、より実感できるのではないでしょうか。また、同時に適度な運動の肝臓機能への影響も忘れてはいけません。

便は「体からの便り」ともいえます。それを読み解くことで、見えにくい肝臓の健康状態を知る時代が、すぐそこまで来ているのかもしれません。

院長からのコメント

肝臓の病気は、症状が出にくいため「気づいたときには進行している」ことが少なくありません。だからこそ私たち消化器専門医は、血液検査や画像検査だけでなく、病気の芽を早く拾い上げられる新しい方法に大きな期待を寄せています。近年注目されていることは、腸内細菌が門脈を介した肝臓への炎症や線維化に影響していることです。腸内環境を調べることで肝臓の状態を推測できる可能性は、患者さんの負担を大きく減らすだけでなく、病気への早期介入にもつながります。

日々の食事や生活習慣は、腸を通じて確実に肝臓へ影響します。「腸内環境を整えることは、肝臓を守ること」です。将来の検査技術の進歩を待ちながら、今日できる一歩として、食生活と生活リズムを見直すことが、まずは何よりの肝臓対策になるでしょう。

  1. Preliminary insights into gut microbiome shifts as screening proxy for MASLD disease progression. doi.org/10.1038/s41598-026-42368-4

この記事を監修した医師

たむら内科・消化器内視鏡クリニック院長

田村 耕一

和歌山県立医科大学医学部卒業。同大学附属病院をはじめ、関連基幹病院にて勤務し、消化器外科手術や消化器内視鏡検査、抗がん剤治療などに精通している。また、筆頭著者として多数の英語論文の執筆歴があり、消化器がんの早期診断と治療を含めた啓発活動にも重要性を見出だしている。2024年11月よりたむら内科・消化器内視鏡クリニック院長として地域医療と内視鏡検査の普及にも注力している。

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