胆石症・胆嚢
胆石症・胆嚢
胆のうとは、肝臓の背側下に位置する小さな袋状の臓器で、主な役割は、肝臓でつくられた消化液である胆汁を一時的に貯蔵し、濃縮することです。食事摂取後、とくに脂肪分を含む食事の後に、胆のうは収縮し胆汁を小腸(十二指腸)に放出し、脂肪の消化と吸収を促進します。
胆石症とは、胆のうや胆管に胆石と呼ばれる結石が形成される病態を指します。胆石は胆汁中のコレステロールやビリルビンが固まって結晶化したもので、大きさに問わず症状を引き起こさないことがありますが、形態や胆管につまることにより、激しい痛みや他の炎症症状を引き起こすことがあります。毎年、約50万人以上の方が新たに発見・診断されるといわれています。
コレステロール胆石
胆汁内のコレステロールが過剰となって結晶化した胆石で、純コレステロール・混成石・混合石に分類されます。頻度が高く、胆石の6割以上を占めます。
色素胆石
胆汁中のビリルビンが主成分の胆石で、ビリルビンカルシウム石と黒色石に分類されます。黒色または茶褐色を呈し、形態もさまざまです。
胆石症の原因はさまざまありますが、以下のものが挙げられます。
コレステロールの摂取過多
生活習慣と胆石症の関連はコホート研究でも証明されていて、胆汁中のコレステロールが増加すると、結晶化しやすくなります。
胆汁中のビリルビン過多
赤血球の分解によってビリルビンが過剰になる病態では、胆汁中に非抱合型ビリルビンが飽和し、結晶になります。
胆汁うっ滞
コレシストキニンに対する反応性の低下や、過度なダイエット、胃切除などで胆のうの萎縮や収縮機能が低下すると、胆汁が濃縮されて胆石が形成されやすくなります。
肥満
体重の増多とコレステロール胆石には関連があるとされています。しかしながら、急激な体重減少や低栄養も胆石発症の要因となります。
性別
女性は男性よりも2〜3倍胆石症になりやすいとされています。女性ホルモンが影響しています。
年齢
年齢が上がるほど、胆石症、胆のう炎ともに発症のリスクが高まります。一般には、50〜60歳代の年齢層で高いとされます。
食生活の乱れ
高コレステロール、高脂肪、高カロリー、低繊維の食事は胆石の発症リスクを高めます。また、運動不足も関与しています。
妊娠
妊娠中のホルモンバランス変化や経口避妊薬の服用、ホルモン剤の使用が胆石の発症リスクを高めます。
胆石を指摘されている人の約80%は、長年にわたって何の症状も起こらないといわれています。しかしながら、胆石が動いたり、胆管につまると右上腹部やみぞおち付近に現れる胆石発作(胆石疝痛)と呼ばれる強い痛みが起こります。胆汁の閉塞が長く続くと、胆のうは腫れて細菌感染を伴う胆のう炎を認めます。この場合、発熱や悪寒、肝機能障害、皮膚や目が黄色くなる黄疸といわれる症状がみられます。胆石が胆管につまってしまうと、胆汁の閉塞から胆管炎が発症し、上記の症状の重症化の恐れがあります。また、胆石が胆管と膵臓からの膵管の合流部につまってしまうと、急性膵炎と呼ばれる入院を含めた専門治療を要する病態が起こり得ます。このような症状がみられた場合は、速やかに受診をしてください。問診や身体診察とともに、血液検査と腹部超音波検査を当院で行うことで、適切かつ迅速に診断いたします。
胆石症の予防には、生活習慣の改善が大切で、体重管理や適度な運動、バランスの取れた食事として高繊維、低脂肪の食事を心がけてください。
また、胆石症は無症状の場合は基本的に経過観察を行いますが、胆石症と胆のうがんの発症には関連があるとされていますので1)、定期的な診察と腹部超音波検査をお勧めします。
症状がある場合や胆石の形態や位置に応じて、腹腔鏡下胆嚢摘出術や開腹手術が必要になります。最近では医療技術が進歩しており、腹腔鏡手術で傷跡が小さく術後の回復も早いため、早期の社会復帰が可能です。しかしながら、胆石が胆管につまって、胆汁の閉塞を来たしている場合は、内視鏡的逆行性胆管造影から内視鏡的乳頭括約筋切開術と呼ばれる胃カメラを十二指腸の乳頭部まで挿入し、乳頭括約筋を切開・拡張した後に結石を除去する治療を要します。当院では消化器外科に精通した院長が適切かつ速やかに連携機関との調整を行いますので、ご安心ください。
胆のうを切開し胆石だけを取る手術法は一般には行われていません。胆石の外科治療を行う場合は胆石とともに胆のうを切除しますが、腹腔鏡手術が主流です。
結石が多く発生したり、炎症をおこす(繰り返す)胆のうは、胆汁を貯めたり排出する本来の機能は低下しています。胆のうを取っても、その機能は胆管などの働きで補われます。一時的に消化不良をおこす可能性があっても、お薬で対応が可能です。
因果関係は長年研究・検討されていて1)、その可能性は示唆されているものの断言はできません。ただし血液検査による炎症や肝機能異常の確認や腹部エコー検査などで胆のうの壁に変化が起きていないかを定期的に受けましょう。
1) Maringhini A et al. Ann Intern Med 107: 30-35, 1987.
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