胃がん
胃がん
胃がんは、胃粘膜から何らかの原因でがん細胞が無秩序に増殖した病態で、胃炎や胃粘膜の萎縮(ヘリコバクター・ピロリ菌感染)から発生するとされます。欧米人と比較して、日本人での発症が多い傾向にあり、日本ではがん死亡率の第3位です。早期発見するには、胃カメラによる観察と生検(組織を調べる)が大切です。
ヘリコバクター・ピロリ菌感染
ヘリコバクター・ピロリ菌とは、胃粘膜中を含め、日常生活の水中や土にも生息し、胃がんのリスクを約5倍高めるとされています※1(詳しくはこちら)。
生活習慣の偏り
いくつかのコホート研究から、喫煙や塩分の過剰摂取、野菜・果物不足、ストレスなどが胃がんの原因になると分かっています※2。
遺伝要因
最近の研究では、CDH1遺伝子の病的バリアントをもつ方は胃がんのリスクが高まること、乳がんや卵巣がん、膵臓がんなどのリスクと関連するBRCA1・BRCA2遺伝子の病的バリアントも胃がんのリスクと関連するとされています※3。これらの方はピロリ菌感染による胃がんのリスクがさらに高まります。
胃がんは、初期の段階での自覚症状はほとんどなく、進行しても症状があまりでないこともあります。代表的な症状としては、みぞおちの痛みや不快感、胸やけ、食欲不振があります。進行してがんから出血がみられると、貧血の症状や血便(黒色の便~タール便)が出ることがあります。これらの症状は、胃炎や胃・十二指腸潰瘍でもみられることから日頃気になる症状がある際は是非お気軽にご相談ください。
食事が摂れない、お腹全体が張った感じ、体重が著しく減った、という症状がみられた場合は、胃がんでは進行して全身にがんが拡がっている可能性がありますので、速やかに受診を検討してください。
X線透視検査では、無症状の方や健康診断、がん検診といった経緯で胃がんがみつかることがあります。あくまでも、胃壁の変形や形態不良が分かるだけですので、確定診断には至らないことがあります。
胃カメラでは、胃の内部をみて病変の生検(組織を採取)を行い、病理検査で胃がんかどうかの確定診断が行われます。早期がんであれば、がんが胃壁の浅い層に限定されている場合には内視鏡治療が可能です。しかしながら、がんの顔つきや深さ、拡がりを正確に診断する必要がある際は、腹部CT検査、腹部超音波検査、超音波内視鏡検査などの特殊な検査を追加する必要があるため、速やかに連携機関との調整を行います。
一般的には、胃粘膜下層までにとどまっている「早期がん」と筋層を超え深く達する「進行がん」に大別されます。胃がんの90%以上は、粘膜上皮細胞から発生する「腺がん」です。増殖形式によって「分化型がん」と「未分化型がん」に分けられます。このうち、未分化型がんはパラパラと固まらずに拡がるタイプで、分化型がんに比べて悪性度が高く、増殖のスピードが速い「スキルス胃がん」も含まれます。
胃がんの進行具合は、ステージ(病期)として表され、ステージ1~4(I~IV期)に分かれます。(以下、TNM分類第8版より引用・作成)
N0 | N1 | N2 | N3 | ||
---|---|---|---|---|---|
リンパ節転移がない | 1-2個 | 3-6個 | 7個以上 | ||
T1a | 粘膜固有層または粘膜筋板まで | Ⅰ | ⅡA | ⅡA | ⅡA |
T1b | 粘膜下層まで | ||||
T2 | 固有筋層まで | Ⅰ | ⅡA | ⅡA | ⅡA |
T3 | 漿膜下層 | ⅡB | Ⅲ | Ⅲ | Ⅲ |
T4a | 漿膜を越えて胃の表面に | ⅡB | Ⅲ | Ⅲ | Ⅲ |
T4b | 隣接する組織や臓器に | ⅣA | ⅣA | ⅣA | ⅣA |
M1 | 肝、肺、腹膜など遠くに転移 | ⅣB | ⅣB | ⅣB | ⅣB |
早期胃がんでリンパ節転移の可能性が低い方には、内視鏡治療が選択でき、内視鏡的粘膜切除術(EMR)と内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)があります。具体的な内視鏡治療の適応を以下に示します。(胃癌治療ガイドライン第6版の内視鏡治療の絶対適応病変)
内視鏡治療の適応とならない胃がんには、定型手術と呼ばれる胃全体または胃の 2/3 の切除に加えてリンパ節と周りの組織を一括して取り除く手術を行います。手術方法は、お腹を開いて切除する開腹手術やお腹に小さな穴を数ヵ所開けてカメラ・器具を挿入して切除する腹腔鏡手術、手術支援ロボットを使用するロボット支援下手術があります。これらで、切除する範囲は変わりませんので安心してください。
詳しくお聞きになりたい方は、消化器外科専門医・指導医である院長にお気軽にお問い合わせください。
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