逆流性食道炎とは

原因

胃酸の増えすぎには、ストレスや喫煙、飲酒、食べ過ぎ・早食い、食事時間の乱れなどの生活習慣が大きく関わります。食道の粘膜に胃酸がふれる原因として、食道と胃の境目である噴門部（ふんもんぶ）の筋肉の力が弱まることや加齢、肥満、亀背、妊娠、食道裂孔ヘルニアなどがあります。

胃酸分泌の増加を引き起こす要因

胃酸の逆流が起こりやすくなる要因

加齢により背骨が曲がる、または妊娠時に腹圧が上昇することが挙げられます。また脂肪の摂取量が多いと、食道括約筋を緩めるコレシストキニンという物質が分泌されます。また最近では、粘膜の炎症やストレスなどによる食道の知覚過敏が、症状増悪に大いに関わるとの報告もあります^※2。

症状

検査・診断

問診

自覚症状の把握は非常に重要です。REQOL問診票やSF-8問診票では、約60～70%の方の診断が可能といわれています。お気軽に症状をお伝えください。

胃内視鏡検査（胃カメラ）

食道粘膜の炎症の程度や範囲、ただれ具合を詳細に観察し、他の病気との鑑別を行います。必要に応じて、生検（食道組織を採取）し、病理検査を行います。重症度を判定するために6段階に分かれた改訂ロサンゼルス分類を使用します^※3。

改訂ロサンゼルス（LA）分類

Grade	説明
N	内視鏡的に変化を認めないもの
M	色調が変化しているもの
A	長径が5mmを超えない粘膜傷害で粘膜ひだに限局されるもの
B	少なくとも1ヵ所の粘膜傷害が5mm以上あり、それぞれ別のひだ上に存在する粘膜傷害が互いに連続していないもの
C	少なくとも1ヵ所の粘膜傷害が2条以上のひだに連続して広がっているが、全周性の75％を超えないもの
D	全周の75％以上の粘膜傷害

PPIテスト

胃酸の分泌抑制効果のあるプロトンポンプ阻害薬（PPI）を用いた検査で、薬剤を1～2週間服用して胸やけなどの自覚症状が改善するか否かを調べます。

胃酸分布測定（24時間pHモニタリング）

細い管を鼻から胃に通して、24時間の胃と食道pHを測定します。普段と同じように過ごすことができ、食事などにも制限はありません。食道粘膜がどの程度胃酸にさらされているかを調べます。

治療方法

生活習慣の改善

食後の胃酸逆流が起こらないよう、すぐ横にならないことや腹圧の上がるような前かがみの姿勢を避けることは予防に繋がります。逆流を起こしやすい食品（アルコール、コーヒー、炭酸飲料、油もの、甘いもの、酸っぱい食品など)を控えることや禁煙、食事時間の是正、適度な運動なども効果的です。

薬物療法

薬物療法が治療の主体であり、胃酸の分泌を抑制する薬剤（PPI）や食物を送り出す運動を亢進させる薬剤、食道・胃の粘膜を保護する薬剤があります。特に、PPIは治療効果が高いと報告されていますし^※4、他の薬剤との併用で治療効果が上がるとされています。患者さんの重症度や症状、他の疾患などを考慮して処方を決めていきます。

外科的治療

薬物治療の効果が乏しい場合や重症化で食道が狭くなったり、出血を繰り返したりするような方には、手術により逆流を防止する治療が行われることがあります。食道裂孔ヘルニアを合併する際にも手術は選択肢の一つとなります。現在では、腹腔鏡手術をはじめとした低侵襲治療が主流です。

詳しくお聞きになりたい方は、消化器外科専門医・指導医である院長にお気軽にお問い合わせください。

文献

• ※1 Kato S et al. Int J Cancer 2006. 119: 1558-1566.
• ※2 Song EM et al. Dig Dis Sci 2013. 58: 471-477.
• ※3 Armstrong D et al. Gastroenterology 1996. 111: 85-92.
• ※4 Mishima I et al. Scand J Gastroenterol 2005. 40: 1005-1009.