2025年11月13日
はじめに
インフルエンザは毎年多くの人々に感染し、乳幼児や高齢者は重症化すると健康被害(脳症や肺炎など)が懸念されます。従来のインフルエンザ診断にはウイルス抗体に対する迅速検査キットやPCR法などが用いられてきましたが、近年ではより迅速かつ精度の高い診断技術の開発が進められています。その中でも注目されているのが、内視鏡用テレスコープ「nodoca™」を用いたインフルエンザ診断です。
nodoca™とは
nodoca™は、先進的な内視鏡画像と咽頭画像データベースを用いて、AI技術を活用した診断機器であり、従来の検査方法とは異なるアプローチで咽頭の感染状態を観察することが可能です。特に咽頭や喉頭など、インフルエンザウイルスが初期に感染しやすい部位を高精度で観察できる点が大きな特徴です。
nodoca™による診断方法
nodoca™を用いたインフルエンザ診断では、患者の咽頭部を内視鏡で10~20秒ほど観察し、ウイルス感染によって生じる特徴的な粘膜の変化や炎症、分泌物の状態を直接評価します。これにより、従来の迅速検査やPCR検査で必要だった鼻汁や咽頭ぬぐい液の採取や試薬の使用を最小限に抑え、短時間で患者の状態を把握できます。
なお、最新機種では、新型コロナウイルスの判定を同時に行うことができるようになり、身体への負担を最小限に感染状態の有無を把握できるようになりました。
nodoca™の利点
- 検査時間の短縮:咽頭を直接観察するだけなので、数十秒以内で診断が判明します。
- 高い診断精度:咽頭粘膜の状態を詳細に評価することで、偽陰性や偽陽性のリスクを軽減し、従来の検査と遜色ない結果が得られます。
- 患者負担の軽減:鼻汁採取に伴う痛みや不快感が少ない検査です。
- リアルタイム診断:診察中(内視鏡観察中)にほぼリアルタイムで結果を得られるため、迅速な治療開始が可能になります。
導入の課題と今後の展望
nodoca™によるインフルエンザ診断(+新型コロナウイルス感染症診断)は革新的ですが、広く患者さんに提供されるためには医療現場での実用性や普及が必要です。今後は、より多くの臨床データの蓄積や診断アルゴリズムの改良、他の感染症への応用などが期待されています。
まとめ
内視鏡用テレスコープ「nodoca™」を活用したインフルエンザ診断は、従来の検査方法に比べて迅速かつ高精度な診断が可能となり、患者への負担も軽減される点で大きなメリットがあります。今後のさらなる技術発展と医療現場への普及により、感染症対策・治療の新たな選択肢として注目されるでしょう。
たむら内科・消化器内視鏡クリニック
院長 田村耕一
