2026年3月09日
抗生物質は成人の軽い虫垂炎にも有効でしょうか?
虫垂炎に治療については、最近の抗生物質の進歩や医療経済の問題から全世界でさまざまな検討、医学研究が行われており、小児のみならず成人の患者さんについても知見が増えてきました。
虫垂炎の治療は?
虫垂炎といえば、突然の腹痛や発熱で病院を受診し、「虫垂の切除手術が必要です」と言われるイメージを持つ人も多いと思います。しかしながら、近年では抗生物質による治療(いわゆる「くすりでちらす」)も選択肢の一つとして注目されています。
では、抗生物質投与で本当に治るの?
虫垂炎の再発や全身への合併症は大丈夫?
手術とどちらが良いの?
そのような疑問を持つみなさんのために、欧州フィンランドの病院で行われた大規模な医学研究の結果を紹介します1)。
研究の内容は?
この研究では、腹部CT検査などで軽症の虫垂炎と診断された18~60歳の患者さん530人を、手術治療を行ったグループと抗生物質で保存的治療を行ったグループにランダムに分けて、その後の10年間を追跡調査しました。抗生物質を使用したグループでは、初めに点滴注射を3日間、その後に飲み薬を7日間服用する治療を行いました。
10年後の調査結果をまとめると、抗生物質で治療した患者のうち約38%が再び虫垂炎になり、そのうちの約44%が手術を受けたことが分かりました。一方、治療による合併症の割合は、手術を先行したグループが約27%だったのに対して、抗生物質を使用したグループは約9%と有意に低い数字でした。健康状態や生活の質については、両方の治療法で大きな差は認められませんでした。
この研究を受けて、単純な(軽症の)虫垂炎の場合は、抗生物質による治療が手術と同様に有効かつ安全な選択肢の一つとして考えられるようになりました。つまり、すぐに手術を選ばず、抗生物質をまず投与して経過を観察することも可能ということが実証されたのです。ただし、再発を繰り返すことや、後から手術が必要になる場合もあるため、治療の選択は医師から十分に説明をうけ、相談することが大切です。
これからの虫垂炎治療の考え方は?
虫垂炎の治療は、昔の虫垂切除をまず行う(俗に言う「もうちょうを切る」!)」時代から、抗生物質による治療を選択肢とするように変化しています。もちろん、手術治療も開腹手術から腹腔鏡手術へとシフトしていて、現在ではへその小さな傷ひとつで手術が完了するようになりました(単孔式腹腔鏡手術)。また、抗生物質による治療も、点滴と効果がほぼ遜色ない内服薬もあります。
ご自身の身体への負担や生活への影響を考えながら、自分に合った治療法を選ぶヒントとして、今回の研究結果を参考にしてみてはいかがでしょうか。
当院では、長年消化器外科に精通した院長が丁寧な腹部診察と腹部エコー検査・採血の結果から虫垂炎の診断を行います。腹痛をはじめ、些細な症状でも気になることがありましたら、お気軽にお問い合わせください。
たむら内科・消化器内視鏡クリニック
田村 耕一
1) JAMA Published Online: January 21, 2026 doi: 10.1001/jama.2025.25921
