2026年2月03日
はじめに
米国がん協会は2026年1月13日に、Cancer Statistics, 20261)レポートを発表しました。本報告書は、米国におけるがんの新規診断、死亡動向、生存率に関する最新データを提供するもので、がん対策の現状と今後の課題を示す重要な資料とされています。
総合的な5年生存率の改善
2015〜2021年に診断された患者の5年相対生存率(relative survival rate)は70%に達し、初めて 7割の患者が5年以上生存する時代となりました。因みに1970年代後半に約50%だったので、大幅に改善しています。
⇒生存率の上昇は、早期発見・治療の進歩・新規薬剤の開発など医療技術革新の成果を反映しています。
がん種別生存率の改善例
多発性骨髄腫
- 5年生存率が約32%→62%とほぼ2倍に改善しています。
- 血液がんの中でも治療抵抗性の高い疾患とされていて、注目すべきことです。
肝臓がん
- 5年生存率が約7%→22%へ大幅に改善しています。
- 肝がんは診断時に進行しているケースが多いため、この伸び率も医療進歩の賜物です。
肺がん
- 5年生存率が約15%→28%と大きな改善がみられます。
- 肺がんは依然死亡率上位の疾患ですが、生存改善は新しい標的療法・免疫療法等の成果を反映しています。
進行がん(ステージ別)での改善例
遠隔転移(ステージ4)でも5年生存率が向上しています
- すべてのがん種の遠隔転移を伴う5年生存率が 17% → 35% に向上しています。
- メラノーマ(皮膚がん):16% → 35%
- 直腸がん(遠隔転移有り):8% → 18%
- 肺がん(広範囲の転移有り):2% → 10%
⇒再発進行・転移がんでも生存率が上がっていることは、治療オプションの拡充や治療最適化の結果です。
なぜ生存率が改善したのか?
①医療技術の進歩
- 免疫療法、分子標的治療、細胞療法などの新規治療が生存期間延長に寄与しています。
- 生物学的遺伝子解析の進歩と創薬の拡充が大きな役割を果たしています。
②早期発見・スクリーニング
- 早期発見・早期治療がの生存率向上に寄与しています。
- 特に乳がん・大腸がんにおいて実証されています。
③公衆衛生介入
- 喫煙率の低下が肺がん死亡率低下をもたらし、生存率改善に寄与しています。
- 予防政策(健診推進など)が長期的に有効であることが実証されました。
課題と今後の方向性
研究資金と保険アクセスの問題
- 政府研究資金削減や保険制度の変動が今後の治療進展を阻害する可能性が示唆されています。
今後の重点領域
- 早期診断技術の更なる確立・普及と全国民への医療アクセスの均てん化
- 進行がん治療に対する更なる医療技術の刷新
- 国民の社会的格差に関する是正
結論
今回の報告書は、米国におけるがん5年生存率が歴史的に改善していることを明確に示しました。70%という大きな改善は、がん研究と医療の進歩が実を結んだ成果であると同時に、さらなるがん撲滅への挑戦が残されていることも示しています。当院は消化器系がんの専門性が非常に高いですので、些細なことでも気になる方はお気軽にお問い合わせください。
- American Cancer Society Cancer Statistics, 2026
たむら内科・消化器内視鏡クリニック
田村耕一
