虫垂炎
虫垂炎
虫垂は右下腹部にある盲腸(大腸の終着点)の先端から伸びる直径1cm、長さ約5cmほどの小さな臓器です。この虫垂に何らかの原因で炎症が起こった状態が虫垂炎で、「もうちょう」と呼ばれることもありますが、正しい病名は「急性虫垂炎」といいます。
正確な原因はわかっていませんが、虫垂炎を引き起こす要因として以下のものが挙げられます。
虫垂の閉塞
虫垂の内部が糞石(ふんせき)や腫瘍、異物、寄生虫などによって閉塞することがあります。
感染
腸内細菌が虫垂内で異常増殖し、炎症を引き起こすといわれています。このため、夏季に多いとされてます。
[文献]Fares A. Ann Med Health Sci Res 2014. 4: 18-21
リンパ組織・粘液組織の充満
感染症や炎症により虫垂のリンパ組織が増大または内腔に粘液組織が充満して、閉塞を引き起こすことがあります。
虫垂炎の症状は、発症初期には上腹部やへそ周りの痛みからはじまり、徐々に右下腹部に移動していくことが多いとされます。また、腹痛に続いて吐き気や嘔吐を伴うこともあり、炎症所見により発熱・悪寒も引き起こすことがあります。
虫垂炎の前兆は胃腸炎や感冒の症状とよく似ているため、この時点で判断することは難しいとされます。歩くたび、もしくは飛び跳ねるとお腹に激しい痛みが響く(反跳痛)場合は、腹膜炎を起こしている可能性が高いため速やかに受診してください。
虫垂炎の診断は、問診を確認した後に以下の方法で行われます。
身体診察
右下腹部に限局した圧痛(おさえると痛みが増す)や反跳痛(虫垂付近をおさえた手を離すと痛みがお腹全体に響く)、筋性防衛(おさえると腹筋に力が入る)などの有無を確認します。
血液検査
白血球数(WBC)の増加や血中C反応性蛋白(CRP)値の上昇がみられます。WBC分画のうち好中球は、細菌などが体内に侵入した際に働き、生体防御に重要な役割を担っていますので、この割合も上昇します。急性炎症の病勢の判定にはCRPの臨床的意義が高く、炎症後迅速に血中に上昇して、回復後は迅速に下降・減少します。
画像診断
腹部超音波検査(腹部エコー検査)や腹部CT検査で虫垂の腫れや膿瘍・腹膜炎の有無を確認します。とくに小児の方には、エコー検査が有用です。
当院では、血液検査と最新の腹部超音波検査機器を揃えていますので、気になる症状がある際は是非受診してください。
虫垂炎の治療は、炎症の程度に応じて、抗生物質の投与による保存的治療から手術による虫垂の摘出があります。迅速かつ適切な診断と治療方針の決定が重要ですので、症状が繰り返している場合や少しでもおかしいと感じた場合は我慢せずに受診してください。
虫垂炎の手術には、以下のものがあります。
腹腔鏡手術
1箇所から3箇所の小さな切開からカメラと器具を挿入して虫垂を摘出する方法です。傷跡も目立たず、回復が早いとされます。現在では、一般的な方法です。
開腹手術
右下腹部の皮膚切開から虫垂を摘出する手術です。膿瘍や腹膜炎に至っているなど感染が拡がっている場合に行われます。
虫垂炎は早期に診断され、適切に治療を行えば、経過は良好な疾患ですが、放置すると虫垂が破裂し膿瘍や腹膜炎を合併するため、長期間の入院・療養を余儀なくされる可能性があります。虫垂炎は老若男女問わずにみられる外科的疾患ですので、虫垂炎が気になる方は、消化器外科専門医・指導医で、長年消化管の外科治療に専門的に従事している院長にお気軽にお問い合わせください。
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